倒産企業取材6千社の経験を生かしたコンサルティングで中小企業を長寿へと導く

事業再生で最も大切なのは、いかに売上を持続的に伸ばしていくかという視点

金融機関に貸し付け条件の緩和努力を求めた中小企業金融円滑化法が2013年3月末で終了し、同法利用企業40万社、倒産予備軍は6万社といわれています。

倒産リスクの高い中小企業にとり、資金繰り支援だけではなく、生産性や競争力を高める経営改善、事業再生支援が喫緊の課題になっています。

認定事業再生士(CTP)の村上義文さんはこの5月、事業再生コンサルティングを行う「Given Partners(ギブンパートナーズ)」を立ち上げました。

 

「事業再生で最も重要なポイントは、貸借対照表の調整や損益計算書の経費見直しだけではなく、売上げをどうやって持続的に伸ばしていくかだと考えています。そのためにどのようなマーケティング戦略をとればいいのか、新たなパートナーと手を携えて販路拡大ができないかなど客観的に分析、実践していきます。千社以上の有力中小企業とのビジネスマッチングをはじめ、今まで気づきにくかった隠れた固有資産に磨きをかけ、トータルなソリューションをご提案できるのが最大の強みです」と村上さんは胸を張ります。

生命保険協会認定のフィナンシャルプランナー(トータル・ライフ・コンサルタント)でもある村上さんは、中小企業の最大の課題の一つである事業承継問題について、生命保険を利用した事業承継プランを積極的に提案しています。「私どもはいわば中小企業のドクター。問診を丁寧に行い、これまでの前職で得た様々な経験、人脈を最大限生かし、その企業の新たな魅力、価値を見いだしていきます」と語ります。

 

「困っている経営者のためにもっとできることが私にはある」

大学の法学部経営法学科を卒業後、広告代理店での営業職を経て、建設、鉄鋼業関連情報に強い民間信用調査会社に転職。企業の財務分析や格付け、中小企業を支援する経営情報誌の編集長を務めるなど、15年間にわたって企業の信用調査業務に携わってきた村上さん。「その間、倒産取材は6千社、調査レポート審査は4千件にのぼり、指導した調査担当者は50人を超える」といいます。

 

「倒産取材を通じて、実に様々な経営者を見てきました。融通手形が発端で自殺に追い込まれたり、債権者集会で罵詈雑言が飛び交う中を土下座して謝る社長、取り込み詐欺の被害に遭い経営が行き詰まった会社、もぬけの殻の事務所を占有する怪しい人たち・・・。調査機関の主な仕事は情報収集、情報提供でしたが、次第にそうした困っている経営者の方々にもっと深く関与していきたい、何か他に役に立てることがあるのではと思うようになっていきました」。

その頃、外資系生命保険会社にスカウトされて入社。「倒産に至った原因をよく分析、考察して反面教師とすれば、破綻を回避できると考えていました。

しかし実際のところ、ハッピーリタイアできる経営者は稀で経営者の個人保証つまり事業承継問題という壁に阻まれ、ずるずると破綻へ向かう企業が多いのが現状なんです」。そして「その解決策として生命保険を活用することが非常に有効だと確信しました」。

昨年11月には、一般社団法人日本事業再生士協会の認定事業再生士の資格を取得。マーケティング支援、生命保険の知識を活用した事業再生コンサルティングを強みとして活動していくため「Given Partners」を独立創業しました。

「経営者の痛みがわかるコンサルタントでありたい」

バレーボールや音楽など、多くの趣味を持つ村上さんですが、中でも好きなのは「Appleウオッチング」。

本人曰く「Mac歴20年超のAppleウオッチャー」だそう。故スティーブ・ジョブズ氏が05年にスタンフォード大学で卒業生に贈った伝説のスピーチ(“Stay hungly, Stay foolish.”のフレーズが有名な演説)は何度も聞き、進路に迷ったときに背中を押してくれたといいます。

売上げを回復させ、企業を長寿体質に変えていくためには、事業再生の担い手が欠かせませんが、「まだ事業再生を専門にコンサルティングできる人材は少ないのが現状です。そこで私が所属する一般社団法人事業再生支援協会福岡支部では月に一度、事業再生に興味ある人たちが集まる勉強会を開催しています。

事業再生に携わるプレイヤーを増やすことが窮地に立つ多くの中小企業を下支えすることに繋がるからです。そのために事業再生の重要性や魅力などを紹介する媒体を創っていきたいと考えています」

「独立して強く感じたのですが、経営者は事業がいつもうまくいくわけではありませんし、リスクと常に背中合わせ。従業員やその家族を養っていく義務もあります。私はそんな経営者の方々の痛みがわかるコンサルタントでありたいと思っています。

中小企業支援は私のライフワーク。夢も挫折も、喜びも悲しみも分かちあいながら、これからも最善のアドバイスができるよう努めていきたいですね」。包容力のある笑顔を浮かべながら、村上さんは力強くそう語りました。(2013年5月取材)